2006年 10月 06日
the other space
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夕方とよるのあいだ
河川敷

水面は空のいろ
音楽のない代わり
風が耳を通りすぎる
となりに座ったきみの
匂いをひきつれて、ゆく

どこまで?



「火星にきたみたいだね」
と、ぽつり

それは、そんなに遠い未来じゃないかもしれない

だってぼくは、あしたのこともわからない

「ふたりで火星にいこうか」
と、きみが笑う

やだよ

だって、きみにきらわれたら
って、考える
かっこわるいから、それもいいね
って、うそぶいた

「とおいね」

と、きみがいったけれど
どんな顔をしてるのか、わからなかった
から

それが火星までの距離のことなのか
実現する未来までの時間なのか
それとも、ぼくときみとの、すきまのことか
も、

わからなかった

風は止んで
音がなくなって

ここがどこだかも、見失いそうになるけど


きみが手をそっとにぎってくれたから
無重力でも、つながっていられる

気がしたよ
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# by another--heaven | 2006-10-06 01:27
2006年 08月 02日
Arch
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夏の日の縁側
なにをするでもなく、ひざをかかえる
あっというまに、体じゅうが、汗でおおわれた

太陽をみあげて、まぶしくて手のひらをかざしてみた
まったく日にやけてない白い手がすけた

去年なら今頃、と思い出しかけて
すぐやめた


父親が庭の植木に水をやっている
わたしは父親にビールをやっている

水を出してくれ、としめっぽいのによく通る声がいう

蛇口をひねると
4秒後
とおいとおい放水口から
シャワーになった水が、出た

虹だ

おお、と父親が感嘆していた
じぶんがつくったみたいに、自慢そうにしている
「おい、虹だぞ」

みたら、わかる

あつい。


汗といっしょに、内側にたまったものが
出てゆけば
いい

いえなかったことば
あきらめたこと
ほしかったもの
あなたのこと

とか。


そこにも、虹はうまれるんだろうか
できたらくぐって、

向こう側には、なにがあるんだろう


まあ、いいじゃないか
と、ひとりごとのように、父親が口ぐせをつぶやいた
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# by another--heaven | 2006-08-02 23:09
2006年 07月 30日
rubber/lover
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だいじなものはいつも、
なくしてから気づくんだ

なんて、月並みなことを、思う

代わりになるものなんて、ないってことも

「それは、不健全だな」
と、もつれた舌で幼なじみがいう
ほんとうに、ビールしか飲まないんだな、と感心する

ぼくの幼なじみは、一貫している
いろんな意味で
というか、
すべてにおいて

「だいじなものは、なくしてから気づく、なんて」
「おれは、十代の頃から知ってたよ」

よく消しゴムをなくしたからな、とジョッキに半分残っている
ビールを一気にあおって、いった

でも、くりかえすんだね、というと
幼なじみは、いまいましげに舌打ちをした

「女なんて、代用品だよ」
「消しゴムをなくしたら、新しいのを買うに決まっているだろう?」

よくいうよ、
えんぴつのおしりについてたちっさい消しゴムを
ずっと使ってたくせに


こないだ、彼女にあったよ、と切り出してみる、
「だれの?」

だれかの、あるいは、だれのでもないかもしれない、きみの昔の彼女。

「どうでもいいよ」
と、彼はあたらしいビールを大きな声で注文した

ぼくは、知ってるんだ
幼なじみは、ビールを飲んでいるときはいつも、
思っていることと逆のことをいう


帰り道、いつになく泥酔していた、幼なじみに肩を貸す
彼は道端の排水溝に嘔吐したあと、ごみ捨て場にもたれかかって、
じぶんでよごした服を眺めていた

「どうでもいいっていったのは」
「あいつは、いつだってきれいで、かわいくて」
「いまも変わらず、きれいだってわかってるからだ」

幼なじみは、いつか彼女に似合うね、といわれた
細身のストライプのスーツばかりを着ている
色違いで、何着ももってるスーツに、彼女のすきな色のネクタイ

いつ彼女に会っても、いいように

と、推測する。


男は、いつだってロマンチストなんだ

ぼくも含めて。

きみが帰ってこないかなんて、期待して
まってる

いつまでも、新しい消しゴムなんて、買わないし
そこはいつまでも、きみの場所なんだ


男って、ばかだな、と二人で笑った
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# by another--heaven | 2006-07-30 23:07
2006年 07月 26日
For the first time (s)
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ふとした瞬間に、ふりかえって
こんなに長くひとりの男のひとのそばに
いるのは、はじめてだ
と、気づく

あなたと長い時間を共有して
出会うまでのお互いの話もたくさんした

すきなもの
きらいなもの
はじめてのキス
はじめての恋人
はじめての失恋
はじめてのセックス
はじめての


「ぼくは、はじめての男のひとじゃないんだね」

なにに関しても、と彼はいった
お互いさまだと思うけど、とわたしはいう

「ぼくにとって、きみははじめてのひとだよ」
どういう意味で?と、尋ねてみる

「はじめて、たばこを吸っててもきらいじゃないひと」

それは、すばらしいことだね、と起き上がってライターをさがしながら、いう
ライターというものは、どうしてこうも、どこに置いたか忘れてしまうんだろう?


「きみは、そういうの、ないの?」

彼が、ライターを手渡してくれた
たばこに火をつけて、けむりを吸い込んだ

くやしいから、いわないでおこうか
なんて、思いながら、けむりを吐き出した

はじめてのことがありすぎて、一度にはいえないんだって


はじめて、わたしは男のひとを心から愛しはじめていて
はじめて、わたしは安心している
そしてはじめて、なくすのがこわい、と思っている

首を曲げてあなたをみると、答えを待ってるみたいに
親指のつめをながめて、じっとしていた

あたまを抱きしめて、かみの毛に鼻をうずめる
わたしとおんなじ、シャンプーのにおいがした


ねえ、こういうとき、なんていえばいいんだろう?

そんなこともわからなくなるぐらいに
わたしは、はじめて

恋をしているよ


Another side
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# by another--heaven | 2006-07-26 01:00
2006年 07月 24日
-・-・-・-・-キリトリセン-・-・-・-・-
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彼女は、よく
けいたいでんわでガス漏れをさぐるようにしながら

「世界を切り取るの」

なんて、いう

昔、カメラはとても大きくて、重たかったのに

ぼくは首から下げた小さめの重箱みたいなカメラをきみに向かってかまえてみて
やめた


この一瞬のきみを世界から切り取ってしまうよりも
移り変わりつづける世界の中で、
笑うきみと、
おなじものを見て笑っていたいから

それに、いつもカメラをかまえていたりしたら
両手できみにふれられない


彼女はなんでも見透かしてるみたいに
カメラをぼくに向けて
「ばかみたいな顔」
と、笑いながらシャッターを切った

ぼくも、つられて笑った

こういうのを、ぜんぶ、忘れたくない


「ビデオカメラを買えば?」
と、彼女は背のびをして、ぼくのほっぺたにちゅっとしながら、それも写真にとった

きっとまたぼくは、ばかみたいで、なんともいえない顔をしているんだろう



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# by another--heaven | 2006-07-24 04:10
2006年 07月 20日
25<X<30
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ぼくは、昔からずっと、よいこだった

父親は理解があったし
母親からは溺愛されていたし
妹もぼくのことを尊敬していたみたいだった

小さい頃から、ずっと
運動神経はそんなによくなかったけれど
走るのだけは、はやかったし
何度も何度も、クラス委員をやった
勉強するのも、いやじゃなかった

ぼくはその頃、絵をかくのがすきだった
きれいなものをみたら、すぐ絵がかけるようにと
小さなサイズのスケッチブックを買ってもらった
36色入りのクーピーと、24色のえのぐも
写生大会でなにかの賞ももらった

ともだちも多かった
すきな女の子ができると、いつもその子の方からすきだといわれた

おとなの人たちがいい、という学校にすすんで、
みんながうらやましい、という会社につとめはじめた

昔の話だ。


家族には、もう何年も会ってない

すきになった女の子はみんな、ぼくからはなれていった
「あなたって、おもしろくない人ね」
なにかの約束事みたいに、みんなそのことばを置いていった


ぼくは、スケッチブックを持ち歩かなくなった
きれいなものに目を向けることもなくなった

それは、おとなになったってことなんだろうか

小さい頃、きれいにみえてた世界は彩りをなくした
色とりどりのえのぐやクーピーなんて、必要ないじゃないか

ぼくはじぶんの足元ばかりをみている
すくわれないように
黒のかわぐつと、灰色のアスファルト
ほら、やっぱり


救われない。


じぶんのつまさきの絵でもかいてみようか
きっとじょうずにかける

うまれてはじめて思いついた、おもしろいことのような気がして
ひさしぶりに笑った
ついでに、決めた

きれいな色のランニングシューズを買おう

ぼくは、けっこういい年だけれど、はじまりはじめることは、できるかもしれない
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# by another--heaven | 2006-07-20 01:23
2006年 07月 14日
strawberry milk
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「ふたりでいると、いつも雨だね」
と、彼がいう

「午後からは晴れ間がのぞくでしょう」
テレビの中のきれいなお姉さんが教えてくれた

雨があがる瞬間を、見たことがなかった、と思う

窓際に並んですわって、
雨があがる瞬間を見のがさないようにする
雨のカーテン越しに世界をながめた
紗がかかったみたいで、あいまいできれい

「牛乳が買いにいきたい」

読んでいる小説から顔を上げずに、彼がいった
彼の顔の左はんぶんをながめる

クール。

みとれている間に、雨は、あがっていた


ながぐつをはいて、牛乳を買いにゆく
青色のあじさいが、道端に咲いていた
このあじさいは、まだ子どもだね、という

「ピンク色のは、おとななの?」

恋をしているからね、とおしえてあげたら
彼は、なんにもいわずに、つないでない方の手で、あたまをなでてくれた

ほんとは?

「生えてるところの土が酸性だったら青色の花が咲いて」
「アルカリ性だったら、きみのすきなピンク色の花が咲くよ」
「生育に一番適している土はph6ぐらいだから、むらさき色の花が多いのかもしれないね」

彼は、なんでもよく知っている

ぶじに牛乳を買っておうちに帰ると、
彼は、じぶんの分のカフェオレをいれて
わたしには、ピンク色の飲み物が入ったコップを渡してくれた

なあに?

「おとなの牛乳」

冷たいから一気に飲んだらいけないよ、といわれる
彼がトイレにいっている間に、こっそりぜんぶ飲んでから、ばれないように注ぎ足した


コップを抱えたまま、戻ってきた彼の肩に鼻をこすりつけると、
またでこぴんされた

「ばれてないと思ってるところが、いまいましい」

彼は、なんでもよく知っている


アルカリの雨が、また降りはじめた
あなたがもしいなくなったら、わたしは青く染まるんだろうか

それはまだ、想像できない


紫陽花。

あなたを忘れられずに、いつまでも
むらさき色の花を咲かせるのかもしれない



Another Side
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# by another--heaven | 2006-07-14 01:23
2006年 07月 10日
She is friend of mine,
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「もてる女の人ってね、隙があるんだって」

さっき喫茶店で読んだアンアンにかいてたの、と友達はいう

そういう彼女も、もてるかもてないかでいったら
たぶん、もてる部類に入ると思うんだけど

じぶんでアンアンを買うタイプじゃないのは、まちがいない

思いながら、隙ってどういうこと?と、聞くと、彼女はんんん、とうなった

「たぶんね、つけいる隙ってことかな」
「おれ、もしかしたらいけるかも、みたいな」
「こいつおれのこと好きなのかな、って思わせるのかな」

よく、わかんない、と彼女は両手でコップを抱えて長いなまえの甘いお酒を飲んだ

たまに思わされてるよ、とぼくは心の中でつぶやいて、苦笑いをした

「それ、なに飲んでるの?」
水だよ、といってみる

「ちょっとちょうだい」
ぼくの返事を待たずに、彼女はスポーツ飲料のCMみたいにごくごくとのどを鳴らして
ウォッカトニックを丸々ぜんぶ飲み干してしまうと
水だね、と14時の太陽みたいに笑った

ウォッカトニックのCMがあれば、きっとオファーがくるだろう
もしあれば、の話だけれど


そのようにして、散々お水をめされたあと
コーヒーがのみたい、と友達はいった

「ちゃんとコーヒーの味がするヘーゼルナッツラテが、のみたい」

もうとっくに日は変わってるけど、というと、彼女はまた笑って、
時間だいじょうぶ?と確認してから、ついてこいといわんばかりに
先に立って歩き出した

しばらく歩くと、深い夜のほとりに、ほんやりとした照明がともっていた
異空間みたいだ、というと、
そういうの、すきだよ、と彼女がいった

幅のせまい階段を上がって、秘密基地みたいな入り口を抜けるワープ航法をへて
おしゃれで小さなカフェにたどりついた
ぶじにちゃんとしたヘーゼルナッツラテを飲みながら、
彼女はかげった月みたいにひそやかにしか、笑わなかった

ぼくは彼女の顔ばかりを見ていた

彼女は窓ガラスごしの遠くをみていた


きみは、ぼくのことをどう思っているんだろう?

きっとこの後、ここを出たら、いつもの交差点でわかれて、
きみはきちんとおうちへひとりで帰る

ぼくの友達は、たぶんじゃなくて、もてる女の子なんだと思う

ぼくも、彼女のまねをして、窓ガラスごしに遠くをみながら、考えてみた
でも、きみはぜんぜんちがう考え事をしているんだろう
むずかしそうな顔をしているぼくに気づいて、彼女は笑っていう

「それ、なに飲んでるの?」

きみは、大事なことはいつもおしえてくれない


交差点で、ぼくは、きみを引きとめてみるべきだろうか
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# by another--heaven | 2006-07-10 02:14
2006年 07月 10日
Rainning
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彼女に会おうと思うと、いつも雨が降った

昔の恋人は、雨が降ると決して外出しなかった
「だって、くつが汚れるじゃない」
だから、雨が降るたびぼくは憂鬱になったり、めんどくさくなったり、したものだ

別に比べるわけじゃないけれど、彼女はそんなこといわなかった

「ねえ、ながぐつを、買ったの」
笑いながらそういって、いつかの雨の日、
きいろいながぐつを、見せてくれた
色違いで、ぼくの分もとなりに並んでいた

ぼくも雨の日が少しだけ、すきになった

ふたりでいると、いつも雨だね、というと、
彼女はぴょこん、とはねおきてうれしそうにいう
「わたしたち、地球にとてもやさしいね」

いつか、世界中が砂漠になったら、ふたりで世界一周をしよう、と約束した


いま、雨が降ると、ぼくは昔の恋人とはまた別の理由で
憂鬱になる
きみは今頃、別のだれかとまたおそろいで
ながぐつを買ったのかもしれない

ふたりでいると、いつも雨が降ったけれど
別々になっても、雨は降るものなんだね

ばかみたいだけれど
ぼくは、世界が砂漠になることを毎日願っている


緑色のながぐつが、ひとりで足踏みをしていた
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# by another--heaven | 2006-07-10 00:46
2006年 05月 31日
2minutes
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目をさますと
アナログ式のめざまし時計は、5時37分をさしていた

それが、この世界にふたつあるうちの、どっちの5時37分なのか
わからない

わからなくても、いいし

二度寝をしてみようかと、思う
次に目をあけたら、明るくなるか、暗くなるか、しているかもしれない
でもまた、12時間後に目がさめそうで、やめた

まだ起きたときの姿勢のまんまだ
ねむったときと、なにひとつ変わっていない
散々寝返りをうったあとで、また元通りの形に戻ったのかもしれない

ねむっている間に、なにかが起こっていたとして、認識してないだけなんだろうか

絶えず、なにかは起こっているのだ
知ってる
じぶんにぜんぜん関係ないみたいだから
知らないふりをする

こうしている間にも、

季節はうつりかわったり
だれかが泣いていたり
月が欠けたり
どこかで恋がはじまっていたり
海のみずの量が増えたり
何人かのひとが死んだり
いくつかの命がうまれたり
あの子がわらったり

して、いるんだろう


これからはじまるのが、夜だといい
またねむるいいわけになるから

5時39分。

世界は、回っている
じぶんを置いて


いまからはじまるのは、朝かもしれない

だとしたら
あるいは
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# by another--heaven | 2006-05-31 23:13